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大阪地方裁判所 平成11年(ワ)9104号 判決 2000年2月16日

本訴=原告

仲村久雄

被告

古段紀明

ほか一名

反訴=原告

関西ジェットライン株式会社

被告

仲村久雄

主文

一  被告古段及び被告関西ジェットラインは、各自、原告に対し、金三九一六万四八一四円及びうち金三五六六万四八一四円に対する平成七年七月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の本訴請求をいずれも棄却する。

三  原告は、被告関西ジェットラインに対し、金八五万一〇七五円及びこれに対する平成七年七月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告関西ジェットラインのその余の反訴請求を棄却する。

五  訴訟費用は、本訴反訴を通じ、これを五分し、その二を原告の負担とし、その余を被告古段及び被告関西ジェットラインの負担とする。

六  この判決は、一、三項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  本訴

被告古段及び被告関西ジェットラインは、各自、原告に対し、金六二〇六万一二三五円及びうち金五六四六万一二三五円に対する平成七年七月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  反訴

原告は、被告関西ジェットラインに対し、金一〇六万一二九〇円及びこれに対する平成七年七月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、次の交通事故により傷害を負った原告が相手方車両の運転者である被告古段に対し民法七〇九条、運行供用者である被告関西ジェットラインに対し自動車損害賠償保障法三条、民法七一五条に基づき損害賠償を求めた事案(本訴)と同事故により車両損害を負った被告関西ジェットラインが原告に対し民法七〇九条に基づき損害賠償(物損)を求めた事案(反訴)である。

一  争いのない事実

1(本件事故)

(一)  日時 平成七年七月一四日午後一〇時一五分ころ

(二)  場所 兵庫県尼崎市武庫川町二丁目六六番地先の信号機により交通整理の行われている交差点(以下「本件交差点」という。)

(三)  原告車両 原告運転の軽四輪貨物自動車(神戸四〇む七五二三)

(四)  被告車両 被告古段運転の普通貨物自動車(神戸一一え二二二〇)

(五)  態様 側面衝突

2(被告古段及び被告関西ジェットラインの責任)

(一)  被告古段 民法七〇九条

(二)  被告関西ジェットライン 自動車損害賠償保障法三条、民法七一五条

3(原告の責任)

民法七〇九条

4(原告の傷害、治療経過、後遺障害)

(一)  脳挫傷、右前頭葉硬膜下血腫、左前頭葉出血による器質的脳損傷、多発肋骨骨折、右血胸、左視束管骨折、鼻骨骨折、高眼圧

(二)  治療経過

(1) 兵庫医科大学病院

平成七年七月一四日から同年九月一一日まで入院

(2) 西武庫病院

平成七年九月一一日から同月一四日まで入院

(3) 医療法人松柏会榎坂病院

平成七年九月一四日から平成九年七月九日まで入院

(三)  後遺障害

(1) 平成九年四月一九日症状固定 高眼圧症

(2) 平成九年七月九日症状固定 頭部外傷後遺症、症候性てんかん

(3) 原告は、頭部外傷による器質的脳損傷の後遺症によって、見当識障害・記銘力障害・作話を主徴とするコルサコフ症候群の症状として現われている知能低下及び衝動性・無爲自閉傾向・意欲の低下などの慢性退行状態を主とする人格変化を認め、事態の理非善悪を弁識しそれによって行動する能力を著しく障害されており、その状態は更に進行していくものと考えられている状態であり、自動車保険料率算定会により平成一一年一一月一六日頭部精神神経障害一級三号、左視力障害一三級一号、併合一級との事前認定がなされた。

(4) 原告は、平成一一年三月一七日、神戸家庭裁判所尼崎支部で禁治産宣告を受け、後見人に海野ミサ子が選任された。

5(争いのない原告の損害)

(一)  休業損害 五七六万一五三六円

7936円×726日

(二)  入院慰謝料 四二七万円

(三)  原告車両(全損時価) 五万円

6(原告への損害填補)

二九七万八七九六円(症状固定日までの治療費)

二  争点

1  過失相殺

(原告)

(一) 被告古段は、最高速度を時速四〇キロメートルと指定された片側四車線の道路の東行車線を時速約八〇キロメートルで東進中、本件交差点に差し掛かり、対面信号機の青色表示に従って本件交差点を通過するに当たり、対向車線を右折のために本件交差点中央部に停止している原告車両を右前方約八三・二メートルに認めたのであるから、適宜速度を減速し、原告車両の動静を注視して進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然右速度のまま進行した過失により、原告車両が右折を始めているのを右前方約四三メートルに接近してようやく気づき、左転把及び急制動の措置を講じたが間に合わず、原告車両左側面部に被告車両前部を衝突させた。

(二) 被告車両には著しい速度違反があり、右折待機中の原告車両を認めながら被告車両の通過を待ってくれるものと軽信した過失は重大であるから、原告の過失三割、被告古段の過失七割とすべきである。

(被告ら)

本件事故は、交差点を対面青色信号に従って直進した被告車両と右折した原告車両の側面衝突事故であり、被告車両の速度超過を考慮しても、原告の過失六割、被告古段の過失四割とすべきである。

2  原告の損害

(一) 治療費 三七五万七八七六円

平成一〇年五月分まで

(二) 付添看護費 三六三万円

5000円×726日

(三) 入院雑費 九四万三八〇〇円

1300円×726日

(四) 逸失利益 四一〇〇万一一一七円

281万1214円×14.580

(五) 後遺障害慰謝料 二五五〇万円

(六) 弁護士費用 五六〇万円

3  被告関西ジェットラインの損害

(一) 被告車両修理費 一六〇万二一五〇円

(二) 弁護士費用 一〇万円

第三判断

一  争点1(過失相殺)

争いのない事実1(本件事故)に証拠(甲六、乙一の1、6、10ないし12、14、15、17、18)を総合すると、次の事実が認められる。

1  本件事故現場は、片側四車線の中央分離帯が設置され、歩車道の区別のある東西方向の道路(以下「本件道路」という。)に南北方向の片側二車線の道路が交差する信号機により交通整理の行われている交差点であり、本件道路は最高速度を時速四〇キロメートルに規制されており、本件道路は東行きも西行きも前方の見通しを妨げるものはなかった。

2  被告古段は、本件道路の東行車線を被告車両を運転して時速約八〇キロメートルで走行中、対面信号機の青色表示に従って本件交差点を通過するに当たり、対向車線を右折のために本件交差点中央部に停止している原告車両を右前方約八三メートルに認めたが、被告車両を通過させてくれるものと軽信して、右速度のまま本件交差点を直進通過しようとしたところ、原告車両が右折を始めているのを右前方約四三メートルに接近してようやく気づき、左転把及び急制動の措置を講じたが間に合わず、原告車両左側面部に被告車両前部を衝突させた。

3  以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

4  右に認定の事実によれば、被告古段には、制限速度違反及び前方注視義務違反があり、原告には、右折進行するに当たっての対向車両の動静に対する注意義務違反があるというべきであり、右本件事故の状況からすると、原告と被告古段との過失割合は一対一とするのが相当である。

二  争点2(原告の損害)

1  争いのない原告の損害 一〇〇八万一五三六円

(一) 休業損害 五七六万一五三六円

(二) 入院慰謝料 四二七万円

(三) 原告車両(全損時価) 五万円

2  治療費 三七五万七八七六円

症状固定日までの治療費が二九七万八七九六円であることは、当事者間に争いがなく、その後平成一〇年五月まで原告の榎坂病院での入院治療費が七七万九〇八〇円を要したことは証拠(甲四)により認められ、証拠(甲一ないし三)によれば、右治療が必要であったことが認められるから、治療費は合計三七五万七八七六円となる。

3  付添看護費

証拠(乙一の7、8)によれば、原告の姉であり後見人である海野ミサ子は、原告の入院中月に二回程度見舞いに行っていること、原告の内縁の妻野中チヅコも見舞いに行っていることが認められるが、付添看護をしたことを認めるに足りる証拠はないから、付添看護費の請求は理由がない。

4  入院雑費 九四万三八〇〇円

一日当たり一三〇〇円として入院期間七二六日であるから、九四万三八〇〇円となる。

5  逸失利益 三七〇〇万四〇〇九円

原告(昭和二六年八月二一日生)は、症状固定時四五歳であり、年収が二八一万一二一四円(当事者間に争いがない。)であったから、労働能力喪失率一〇〇パーセントとして、六七歳までの二二年間の逸失利益の現価をライプニッツ式計算法により算定すると、次の計算式のとおり三七〇〇万四〇〇九円となる。

281万1214円×13.1630=3700万4009円

6  後遺障害慰謝料 二五五〇万円

原告の後遺障害の程度からすると、後遺障害慰謝料は二五五〇万円と認めるのが相当である。

7  以上を合計すると、七七二八万七二二一円となる。

8  右金額からその五割を過失相殺すると、三八六四万三六一〇円となる。

9  右三八六四万三六一〇円から既払額二九七万八七九六円を控除すると三五六六万四八一四円となる。

10  弁護士費用 三五〇万円

本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、三五〇万円と認めるのが相当である。

11  よって、原告の本訴請求は、三九一六万四八一四円及び弁護士費用を除く三五六六万四八一四円に対する本件事故の日である平成七年七月一四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

三  争点3(被告関西ジェットラインの損害)

1  被告車両修理費 一六〇万二一五〇円

証拠(乙三の1、2)により認められる。

2  右金額からその五割を過失相殺すると、八〇万一〇七五円となる。

3  弁護士費用 五万円

本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は五万円と認めるのが相当である。

4  よって、被告関西ジェットラインの反訴請求は、八五万一〇七五円及びこれに対する本件事故の日である平成七年七月一四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

(裁判官 吉波佳希)

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